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荒井さんは私の理想のヤンデレ
初めて彼女に会ったのは、2年に進級してからでした。
ただでさえ大きい学校ですからね、1年のときに彼女のことを知らなくても無理はありません。もしかするとすれ違ったことくらいはあったのかもしれませんが、どちらにしろ僕の記憶にはありませんでしたので、2年のあのときが初対面だと言っても差し支えはないでしょう。
彼女は、僕の隣の席でした。
クラス変えをして初めての登校日、彼女は僕に対して戸惑っているようでした。けれど別に怯えているというわけではないんです。後から本人から聞いた話では、ただ声を掛けていいものかどうかということで少し悩んでいただけだったそうですが。
「えっと、初めまして、掟山黒音っていいます。これからよろしくね」
最初はどうしたものかと思いましたよ。にこりと笑った彼女は、そう言ってこちらの返事を待っているようでした。
「…荒井昭二です。こちらこそよろしく」
僕はそうとだけ返しました。特段気を遣うつもりもありませんでしたしね。
それでも彼女は、それこそが待ち望んでいた応えだと言わんばかりに、一度にこりと笑ってから自分の席に着きました。
彼女は暗い性格というわけではありませんが、率先して友人を作るタイプでもありませんでした。昼休みも、大抵は教室で本を読んでいましたね。まぁ、隣の席ですから、それなりに話もするわけです。
それから察する分には、どうやら彼女はそれなりに頭の回転が速いようでした。こちらの見解を話せば、それ相応の答えが返ってくる。良い意味で僕の想像をこえるような返答が彼女の口から出てくることもありますから、やはりその点は評価するべきでしょう。
…彼女との関係、ですか?そうですね、続いていますよ。何ら変わりなく、ね。
よく、お互いに読んだ本の話をします。彼女が読む本というのも、大概のものは僕も既に読み終えたものですから、話も弾むわけです。本を薦め合ったりもしますね。
ですが、これは予定調和のひとつでしょう。きっとこの先も変わることのないことです。
変わったのは僕の心境です。以前までも別に嫌いというわけではありませんでしたし、それは今でも同じなのですがね。
どうやら、僕は彼女に興味を持ってしまったようなのです。
例えば彼女の首を締め上げたら、彼女は僕をどんな風に思うだろう。例えば彼女に包丁を向けたら、彼女はどんな反応をするだろう。例えば彼女を屋上から突き落としたら、そのときはどんな表情を見せてくれるのだろう、とか、ね。
…いえ、実行するつもりはありませんよ。僕は今の彼女との関係を、心地よいと思っていますから。生きている彼女と話をしているだけというのも、なかなか面白いものです。
けれど、いつか……いつか、そんな彼女の表情も、見てみたいと思っているというだけの話です…ひひ……
ぼくとかのじょとその関係 荒井昭二の場合
10.01.01