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風魔小太郎 (無双)
二年ほど前の化石級に古いものが出土しました。
傷口がずきずきするような描写があるので、一応伏せておきます。
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真庭鳳凰 学パロ
「鳳凰、さん」

掠れるように頼りない声は、それさえもぎゅうと強められた彼の腕によって、温かいその鎖骨の辺りに吸い込まれていった。
どうしてこういう状況になったのか、未だよくわからなかった。
今日はいつもより月が綺麗だったというだけの、いつもと変わらない、いつも通りの一日だったはずだ。何故今日に限ってこんな真夜中に鳳凰さんの部屋を訪ねようと思ったのかはわからないけれど、
ただわかるのは、私には鳳凰さんに抱き締められているというこの状況を享受する他ない、ということだけだ。
どうしていいのかわからない。
単純に、それだけの理由であるのだけれど。

「鳳凰さん、…鳳凰さん」

鳳凰さんは私の言葉に応えない。
私自身も、ただひたすらに彼の名前を呼ぶ。それ以上の言葉が続かないのだ。何を言っていいかわからないというよりも、他に何も言ってはいけないような、そんな気がする。
鳳凰さんの部屋は真っ暗だった。そんな中、密着しているふたつの体から、それぞれの心音がやけに鮮明に耳に届く。

とくん、とくん、とくん、とくん
ああ、私も鳳凰さんも生きているんだな、なんて、どうしようもないことを考えてみたりして。

不意に、私の背中に回っていた鳳凰さんの腕の力が少しだけ弱まった。
見上げた鳳凰さんの目の中は、色んな色が綯い交ぜになって、その考えは読めそうもない。
でも、少し、かなしそうだった。
ふとして、その目に映っているのも他でもない私の目であることに気付く。私自身も、不思議なことにかなしそうな目をしていることにも気が付いた。
今も尚私の背にある鳳凰さんの手のひらは、思っていたよりもずっと大きかった。

「…もう二度と、お前を離したりはしない」

そう呟かれた声は、鳳凰さんのそれとは到底思えないほどか細いものだった。
鳳凰さんは私の唇に自身のそれを重ねる。
私の中の、いつかどこかの頭が疼く。不思議なのは、私自身も彼と同じことを望んでいることだった。


頽廃的な恋をする
大谷吉継

大谷吉継は、目下に広がる兵共にその黒い眼差しを向けた。
切り立った崖から見える布陣は万全。兵の士気も高い。この様子でいけば、この戦で勝利を収めるのは八割方こちらの軍だろう。
できればすぐにでも進軍の采配を振りたい大谷であったが、そうはできない理由はひとつあった。

「…して、あれの準備はまだか」

後ろに控えていた兵士にそう問うも、それは、だの、あの、だの、曖昧な返事が返ってくるばかり。その狼狽が何に起因しているものかは、大谷自身もよくわかっていたので、兵士を咎めることなく大谷は大きく息をついた。
そのとき、がさりと傍らの草むらが揺れた。

「ぎょ、刑部さま、毒塵針の整備、終わり…ました…!」
「遅い。何をしておる」

大谷の繰る数珠のひとつが、草陰から現れた女の頭を打った。
がいん、と大きな音がして、女はその場にうずくまる。「ごおおおお…!」などと意味のわからないうめき声を上げる彼女を、控えていた兵士は心配そうに眺めていた。

「整備の何に手間取った」

大谷が彼女を見る目は、依然冷ややかなままである。
ようやく頭の痛みから立ち直った彼女は、それでもその瞳に涙を溜めながら、いかにも恐る恐ると言ったようにその口を開いた。

「いやあ…えっと、整備自体は、ものの半刻で終わったんです、けれども…」
「早に申せ」
「…ええと、あまりの人の多さに道に迷いまして…!」

がいん。
二撃目である。
しかも数珠が入ったのは先程と同じ箇所だった。奔った痛みも相当のものであったようだ。大谷は狙って行ったことなので、何も言うまいが。

「うぐおおおおお…!」
「ぬしの愚妹さには恐れ入る。あれほど下準備は万端にせよと言ったはずよ」
「痛い…痛いです刑部さま…!でももう一発くらいなら耐えられます!」

まだ何かあるのか。胡乱な目を向けた大谷だったが、彼女はその点を気にしているのかいないのかよくわからない。ただ、俯いたまま、ぼそりと言った。

「天君が言うことを聞かず、敵陣に突っ込んでいきました…!」
「やれ薬が効かなかったと見える。少々頭を冷やして来やれ」

数珠は頭に落ちなかった。けれどその代わり彼女の身体はふわりと宙に浮いて、大谷の目の前――切り立った崖のその外に、移動させられる。

「…ぎょ、刑部さま…いや冗談ですよね、まさか…」
「そのまさかよ」

次の瞬間には、全ての重力が彼女の身体に戻った。
凄まじい悲鳴が遠ざかっていくのを聞きながら、下には確か三成がいるから大事はなかろうと、大谷は深く息を吐き出した。
 

だいたいこんなもん
(待ちと見せ、苦しむ様をわれに見せ)
(御意!あっ間違った!)
(………)
10.11.09

ごきげんよう
思いついたお話をまったりねっちょり書き綴ってみたりみなかったりします。
名前変換はできません。たまに夢じゃないのもあるかもしれません。
それでも大丈夫だよ!って方はどうぞ!
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